Stories

of Casa CABaN HAYAMA

Story vol.1

TOMORROWLANDがホテルをつくること

4, July 2025

すべては偶然からはじまった

2017年7月15日、トゥモローランドの創業者、佐々木啓之のスマートフォンに1本の電話が入った。イタリアで活躍する建築家・インテリアデザイナーのパトリシア・ウルキオラからだった。仕事で日本に来ていた彼女はかなり疲れているようで、旧知の佐々木と食事でもと思って連絡してきたという。1時間ほどして佐々木がいた葉山の森戸海岸にやってきた彼女は、一瞬にしてこの場所を気に入ったようだった。静かに打ち寄せる波、海の向こうに沈む夕日、富士山のシルエット。彼女の心も波のように穏やかになっていた。そしてこの偶然の出会いが、新しい物語のはじまりになった。

パトリシアとの出会い

トゥモローランドとパトリシアのコラボレーションのはじまりは1993年。渋谷にオープンした「デプレ」というショップのインテリアデザインを担当してもらったのが最初で、彼女がまだ無名のときだった。数年前にパリで出会ったパトリシアの才能を見込んで、佐々木が起用を決めた。彼女ははじめての来日で、すっかり日本とトゥモローランドのファンになり、2013年には渋谷西武で「パトリシア・ウルキオラ展」を開催。日本との絆が太くなる一方、2015年にはカッシーナのアートディレクターに就任するなど、活躍の場は世界に広がっていった。そして世界で名声を得ても、彼女はトゥモローランドとの出会いをずっと大切にしていた。

葉山にホテルをつくろう

葉山のロケーションはパトリシアに大きなインスピレーションを与えた。トゥモローランドとゆかりのあるこの場所にホテルをつくったらどんなに素晴らしいことだろう。海と富士山を望む家のようなホテルは、日本はもちろん世界中の人の心を癒すスペースとなるし、トゥモローランドの世界観も伝えることができる…。ホテルプロジェクトが一気に動きだした。コスタリカやシチリア島、イビサ島に旅をし、このときの体験がホテルづくりの大きなヒントになった。そしてミラノのスタジオ・ウルキオラや彼女が手がけたコモ湖のホテルを訪問、その後もミラノ、東京、オンラインでワークショップを重ね、プランは具体的になっていった。

TOMORROWLANDがホテルを手がける意味

トゥモローランドは1978年の創業以来、細部までこだわりぬいた服づくりをしてきた。そのこだわりは商品だけではなく、接客や店舗空間にも一貫していて、それらすべてを通してお客さまに装うことの楽しさや生活の歓びを味わっていただいている。ホテルという存在は、きっとこれまで私たちが提供してきた衣食住遊知すべてをかたちにできる場所になるに違いない。私たちが培ってきた経験や知識、技術を活かして、従来のホテルの枠組みを超えた新しい感動を提供しよう…。パトリシアのアイデアから、トゥモローランドの新しいプロジェクトのかたちが明確になった。