of Casa CABaN HAYAMA
Story vol.2
17, July 2025
パトリシア・ウルキオラは葉山・森戸海岸を訪れたとき、ここのロケーションに心を奪われた。日本の各地を訪れていたが、そのどことも違う魅力があった。とりわけ彼女を虜にしたのは相模湾の向かい側に見える富士山の雄姿だった。彼女は語る。「この日本のシンボルがインスピレーションの核となって、空間構成のイメージが湧いたの。いくつもの建築ユニットがオープンな回廊で結ばれる。客室で目覚めても、屋外回廊を歩いていても、ラウンジでくつろいでいるときも、かならず海の向こうに富士山を見ることができるわけ。静けさ、力強さ、そして日本文化の象徴が、きっとゲストに感動的な体験をもたらすことでしょう。」
パトリシアが考えた建築コンセプトは“Weaving”(編みこんでいく)。それはニットの服づくりからスタートしたトゥモローランドへのオマージュであり、時間と空間を編みこんだ環境がやさしく人を包みこんでいくというイメージを表現している。あらゆるマテリアルにこのコンセプトが活かされているが、とりわけ象徴的なのはニットを想起させる格子パターンのファサードパネル。リサイクル素材100%でできているこのパネルは、デザイン的なアイコンであるだけなく、光を採り入れながらプライバシーを守る機能性も持っている。このパターンは日本の伝統的な織物にも通じ、ホテルのすみずみのデザインモチーフとなっている。
パトリシア・ウルキオラはいくつものホテルの設計や内装にも携わっているし、カッシーナ等のメーカーで家具のデザインも担当している。彼女は世界有数の建築家・インテリアデザイナーだが、企画から設計、建築、内装、そして家具まですべてを手がけるのは今回がはじめて。「とても刺激的でやりがいのある仕事。建物からインテリアの素材、デザインまですべてを一貫した考えでまとめあげることができる。このロケーションとトゥモローランドをひとつにして世界観を表現できることに喜びを感じる。大好きな日本とトゥモローランド、そしてヒロ(佐々木啓之)への私の想いがこのホテルのかたちになっているの。」彼女の新しい代表作がまもなく誕生する。
Patricia Urquiola
パトリシア・ウルキオラ
1961年、スペインのオビエドで生まれる。マドリード工科大学、ミラノ工科大学で建築とデザインを学び、現在はミラノを拠点に活動している。2001年、自身のスタジオを開設し、建築作品のみならず、世界的トップブランドのプロダクトやショールームのデザイン、インスタレーションなど、幅広い分野で活躍。またニューヨーク近代美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)、アムステルダム市立美術館など、さまざまな美術館やコレクションに作品の一部が展示されている。Ad Spain、Wallpaper、ELLE DÉCORにおいてデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、数々の国際的な賞を受賞。2015年9月よりCassinaのアートディレクターに就任。