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Story vol.13

Casa CABaN HAYAMAの食材「葉山うに」

21, Aug 2026

海の環境問題の解決にもつながる「葉山うに」

移ろう季節のなかで、葉山の海や近隣の土地が育んだ豊かな恵みを、最もふさわしい形で皿の上に表現する。 それが、Casa CABaN HAYAMAが大切にしている食への想いです。 その象徴ともいえる夏の食材のひとつに、メインダイニングと和食『あしたば』で扱う「葉山うに」があります。磯が香る豊かな風味と、とろけるような口溶けを持つこのウニ。 実は、葉山の海が抱える海洋環境問題の解決策にもつながる食材なのです。現在、地球温暖化などの影響で生態系のバランスが崩れることによって、日本全国の海でウニの異常繁殖が起きているのをご存知でしょうか。それは、葉山の海も例外ではありません。ウニは寿命が10年以上ともいわれ、飢餓状態にもとても強い生物です。大量発生したウニが海中の海藻を根こそぎ食べ尽くしてしまうことで「海の砂漠化」が進行し、さまざまな生き物たちが産卵場所や棲み処を失い、本来の生態系が失われてしまう深刻な事態につながっています。

「大量発生したウニは海藻を食べ尽くしているため、ほとんど身が入っていません。そのため食材として活かすこともできないのですが、駆除や廃棄にもコストがかかり、深刻な問題になっていました」。そう語るのは、「くぼたマリンファーム」の窪田千春さんです。窪田さんはこのウニの有効利用を目指して真名瀬漁港との共同研究をスタートさせます。磯で大量発生しているウニを獲り、生け簀に移して上質な餌を与えることで、風味豊かな身を育てる「蓄養」の技術を確立。「葉山うに」としてブランド化に成功しました。「失敗の連続でした。カゴに入れる密度を高くしすぎると死んでしまい、餌をやりすぎると腐ってしまう。外洋ではあんなに強いのに、いざ人の手で育てようとすると、驚くほど繊細なんです」

生け簀の中で葉山のワカメや昆布を食べて育つ。

ウニが持つ本来の美味しさを求めて

ウニの味わいは食べた餌に大きく左右されます。養殖においては人工飼料を使うことが一般的ですが、「くぼたマリンファーム」では天然の餌にこだわります。与えるのは葉山で採れたワカメや昆布のみ。また、加工の工程で色合いを保つために多く使われる食品添加物「ミョウバン」も一切使用しません。
ウニ本来の美味しさを極める蓄養を目指した窪田さん。漁師や漁協、自治体の協力を得るために、東京の自宅から葉山へ半年間通い詰め、少しずつ信頼関係を築き上げていきました。その熱意と確かな品質は、やがて全国の料理人たちを惹きつけます。

しっかりした旨みが口の中に広がる「葉山うに」。その味わいは葉山の海そのもの。

「葉山うに」が生む循環の物語

メインダイニングの武田シェフも、窪田さんの情熱に共鳴した一人です。 「『葉山うに』は甘みが凝縮されていて、素晴らしいウニなんです。すでに完成された味なので、余計な手は加えず、ただウニを味わっていただくひと皿に仕上げています」。和食『あしたば』の安藤料理長もこう続けます。 「“ウニといえば北海道”というイメージを持つ方も多いですが、すぐ目の前の海でこれほど上質なものが手に入るなら、使わない手はありません」
「葉山うに」の物語は、皿の上だけでは終わりません。身を取り出した後のウニの殻は天日干しされ、三浦半島で無農薬野菜を育てる農園へと運ばれて堆肥として生まれ変わるのです。

葉山の海が抱える課題に向き合い、ひたむきな情熱によって極上の食材へと生まれ変わった「葉山うに」。葉山の海で育ち、人を満たし、やがて大地へと還っていく「葉山うに」を通して、豊かな海の循環の物語をお届けします。

メインダイニングの前菜。葉山うにと三浦とうもろこしの冷製スープ・藤沢ミニトマトとの取り合わせ

メインダイニングのパスタ。葉山うにのフェデリーニ

『あしたば』で提供される「季節の茶巾絞り」。葉山うにの手毬寿司に葛あんがかかる。