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Story vol.8

時を超える休息の地

9, Feb 2026

別荘地としての葉山

遠くに富士山を望み、海と山の眺望が美しい葉山。この地が保養地として愛されるようになったのは、近年のことではありません。鎌倉に幕府を開いた源頼朝が、葉山に別邸を建てると、その後に将軍や要人たちが訪れる行楽の地となりました。その記録は古い文献にも残されています。それから時を経て、明治20年頃になると、レナード・D・マルチーノ駐日イタリア公使らの外国人たちが葉山を訪れ、温暖な気候と豊かな自然を称賛し、自ら別荘を構えます。彼らがこの地の魅力を各地に伝えたこともあって、やすらぎを求めて多くの人が葉山を訪れるようになります。そして、明治22年に横須賀線が開通すると、宮家や旧公家、旧藩主、明治の元勲たちが次々と別荘を建てました。皇室の侍医であったドイツ人医師エルウィン・フォン・ベルツ博士は、医学者の視点から葉山が保養に最適であることを見出し、明治天皇に御用邸の設置を進言したと伝えられています。ベルツ博士の薦めもあって明治27年には御用邸が竣工。こうして葉山は、名実ともに日本を代表する別荘地としての地位を確立しました。海と山、そして静けさの中に息づくその風景は、今も変わらず人々を惹きつけてやみません。

自然がデザインした土地

葉山が人々をこれほど惹きつけてきたのは、その地形の美しさゆえでしょう。『葉山町郷土史』(1975年)には、次のような記載があります。「この葉山は青松白砂の海岸と奇岩の磯浜で、前面に海波静かな相模湾が広々と展開し遥かむこうには千古の雪をいただく壮麗な霊峰富士が雲表にそびえ、その下に箱根の連峰長く低く海中にひき、近くは江の島、稲村ガ崎が墨絵のようにうかんでみえ、ふりかえれば、山々谷々は滴るような翠緑で、更に加えて気候温暖の絶好の保養地であり、遊覧地でもある。」この一節には、葉山という土地の魅力が端的に描かれています。葉山が日本有数の別荘地となった理由は、自然がデザインしてくれた景観美にあることが大きいのです。葉山の別荘地を象徴する言葉に「浜際」と「山裾」という表現があります。Casa CABaN HAYAMAが佇む森戸海岸周辺は、多くの華族や政財界の人々が別荘を構えていた「浜際」の地。今もなお、輝く海と心地よい潮風の中で、この土地が持つ特別なエネルギーを感じることができます。

小径に導かれて

昭和初期、葉山の別荘文化は最盛期を迎えました。しかし、戦後、公職追放や財閥解体といった時代の流れの中で、多くの人々が別荘を手放していきます。Casa CABaN HAYAMAのある森戸海岸の隣のビーチである一色海岸周辺の宮家の別邸も姿を変え、現在は、葉山しおさい公園、神奈川県立近代美術館 葉山館、葉山公園などの公共施設として親しまれています。往時を象徴するような広大な邸宅と豊かな緑の風景は少なくなりましたが、今も葉山には、別荘文化が育んだ穏やかな空気と、ゆったりとした時の流れが息づいています。その名残を感じさせるのが、葉山に点在する小径です。昔の別荘の多くは、表通りではなく、木々に囲まれ奥まった場所に建てられました。人力車や馬車が通っていた頃の間隔でつくられたその小径は、今もなお、静かに当時の面影を残しています。緑のトンネルのような小径を抜けると、ふいに海の光が差しこみ、遠くに水平線が見えてくる。その瞬間、時の流れを超えて、この土地に積み重ねられてきた記憶が訪れるでしょう。

参考文献:
『葉山の別荘 旧き良き時代の断章』(用美社刊)
『葉山 高質なスロースタイルブランドの実践』(芙蓉書房出版刊)